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2009.07.19

今日の消化本(7/17)

古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』(文春文庫)

★★★★
古川日出男、2005年発表の長編小説。物語は、第二次世界大戦中、キスカ島に取り残された4頭の軍用犬に始まる。彼(彼女)らが交配と混血を繰り返し、世代を重ねて生き抜いていく様子を語った物語である(それと並行して、現在?の時点で語られるストーリーもあるが、やはりメインは犬たちの生存の記録)。
物語の主人公はあくまで犬たちであり、人間の影は薄い。登場する犬の殆どが複数の飼い主を持つことになる。しかし世界から隔絶して生きている訳ではなく、むしろ人間とその人間の繰り広げる戦争(犬たちのルーツが軍用犬なのは象徴的)に巻き込まれ、翻弄され、弄ばれることになる。
古川日出男は、独特の文体を持つ作家であるが、本作では、『アラビアの夜の種族』などで見られるような偏執狂的な面は後退し、むしろ淡々とした語り口調で物語は進む。犬たちの生き様と死に様を描く時も、その筆はどこかさらっとしている。
本作は、犬たちの生存への苦闘を描いた動物小説としても読める(読めなくはない)し、戦争に終始した20世紀という時代を、犬たちの目を通して描いた時代小説とも言える。いずれにしてもこれは古川日出男にしか書けない真の魔術的な小説である。

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