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October 2016

2016.10.20

■私的ブルースマン列伝■ 第2回 芸達者な小生意気〜ピー・ウィー・クレイトン篇〜

「私的ブルースマン列伝」第2回、旧館からの移行分をお送りします。今読み返してみると、文中にも何箇所か引用している、小出斉氏の『ブルース・ギター バトル・オブ・ザ・マスターズ』(ミュージック・マガジン社刊)の記事の影響が強いなあ、ていうかそもそもその受け売り?という気がしないではないですが、まあ、これも若書き(だから若くないって)ということでお許し願いたい所存です。



これは私の勝手な想像(というか妄想?)なのだが、ピー・ウィー・クレイトンというブルースマンは、人によって極端に評価が分かれるような気がする。即ち、好きな人は大好き、嫌いな人は大嫌い、という具合に。
もちろんこんな文章を書いている私は当然「大好き派」の一人な訳だが、そんな私でもピー・ウィー・クレイトンに対して「何となく生意気そう」という感想を抱くことがある。もちろん実際に会ったことがある訳ではないので、完全な妄想なのだが。

ピー・ウィー・クレイトン、本名コニー・カーティス・クレイトン。1914年テキサス州ロックデイル生まれ、1985年LAで死去。ブルースマンとしての活動は1940年代に始まり、Modern,Imperial,Vee Jeyなど多くのレーベルに優れた録音を残した。1983年には来日もしている。
彼のブルースの特徴は、まず何といってもテキサスブルース特有の攻撃的でワイルドなギターだ。ぎゅわんぎゅわん、という擬音語が似合うような金属的で脳天を刺激する音色がまず耳につく。しかし、それだけが特徴ではない。
彼がギターを始めたのは30歳以降とかなり遅かったようだが、なんとあのT−ボーン・ウォーカー直々にギターを習ったというから凄い。ワイルドさに耳を奪われがちだが、よく聴くと彼のギターには、確かに優雅でスムースという面も強く出ていて、そのあたりはまさしくT−ボーン直伝という感じがする(もっともそれが悪いほうへ行くと、しょせんT−ボーンの亜流に過ぎない、というネガティヴな評価にもなりかねないが)。そして、ワイルドで攻撃的、とは言っても、どこか足場はきっちり固めているというか、脱線はしない、という印象がある。
その辺は同じテキサスのワイルドギタリストでもアルバート・コリンズあたりとは違うところだ。世代的にはモダンブルースに入るピー・ウィーであるが、感覚的に言えば片足はモダンブルースの世界に、もう片足はより古いシティブルースの世界に置いているような気がする。だからと言って、彼がモダンブルースギタリストとして劣っている、という訳では決してないのだが…。

とにかくギターに関しては、ハードでワイルドなギターソロから、小粋なインストまで、幅広くこなした彼であるが、歌に関しては、下手ではないものの、決して上手いとは言えない。それでも自分の力量をちゃんと心得ていて、味わいのある小唄をもっぱら歌っていた。ギターで見せるワイルドさとは裏腹に、歌を歌うと軽妙で洒脱な印象が強くなるから不思議である。
小出斉氏の言葉を借りれば『激しいギター爆発ものと、小唄系ブルース、これがピー・ウィーの味なのだ。』(『ブルース・ギター バトル・オブ・ザ・マスターズ』(ミュージック・マガジン社刊)より)なのである。
とにかく、ギターにしろ歌にしろ、達者で隙がないという感じがする。おそらく器用な人だったのだろう。

冒頭で書いた、嫌いな人は嫌い、という点も、そのあたりの器用さが裏目に出ているような気がする(いやだから妄想なのだが)。
もっとも「小生意気さ」が完全な妄想ではないことを裏付ける?エピソードが2,3あることはある(全部受け売りだが)。

インタビューでの「おれがT−ボーンから教わったという噂だが、それは嘘。(中略)ギターの腕は俺の方が上。やつは3本の指でしか弾けないが、俺は4本の指で弾けるのだ」云々の発言。

1983年の来日時、インタビュアーに質問の隙も与えず小一時間しゃべり倒し事件。

(二つとも前掲の『ブルース・ギター バトル・オブ・ザ・マスターズ』より)


もっとも、仮にもブルースマンというかアーティストであれば、ある程度我が強く、自己主張も強くて当然だし、二つ目のエピソードなんかはむしろ人の良いオジサン、という風にも取れなくはない。やはり全ては私の妄想なのかもしれない。
しかし、「小生意気」という部分が妄想だったとしても、「芸達者」という部分は妄想ではない。これはれっきとした真実である。

◆お勧めCD
『The Modern Legacy Vol.1』(Ace Records CDCHD 632)
彼の全盛期である1940年代後半にModernレーベルに残した録音の第1集である。とにかくこれを聴かなくては話にならない。1曲目「Texas Hop」の跳ねまくるギターにノックアウトされること請け合い。もちろん代表曲「Blues After Hours」を始めとする名曲てんこもりの23曲。


『The Modern Legacy, Vol.2: Blues Guitar Magic』(Ace Records CDCHD 767)
続くModern録音集第2集。テイク違いなども含む25曲。この2枚で、Modern録音はほぼ網羅されている。


『Complete Aladdin & Imperial Recordings』(Capitol Records 7243 8 36292 2 0)
Modern録音に次いで重要な、AladdinおよびImperialレーベルへの録音全曲集。
※残念ながら現在廃盤で手に入れにくいようです。


『Early Hour Blues』(Blind Pig Records BPCD 5052)
晩年の2枚のアルバムから編集されたCD。さすがに往年のギラギラするようなワイルドさはないが、それでもギターの音色には艶があり聴いていて飽きない。


第2回 了          


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2016.10.08

■私的ブルースマン列伝■ 第1回 燃え尽きるほどヒート〜ルーサー・アリソン篇〜

旧館からの移行残りのコンテンツ、「私的ブルースマン列伝」の第1回を再録します。とは言っても、昔に書いたものですので、内容はある程度修正を行いました。
それから、今までは「音楽四方山話」というタイトルを付けていましたが、今回それをやると、「音楽四方山話第◯回私的ブルースマン列伝第□回」ということになってややこしいので、今後は、最初から連載する予定のあるものは、「音楽四方山話」の冠を外し、単発ネタのもののみ「音楽四方山話」とすることにしました。
それでは若書き(というほど若かった訳ではないが)の誹りは免れえませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。



私は、ルーサー・アリソンについては、それほど熱狂的なファンという訳ではない。CDは一応ほぼ全部のCDを集めたが、それほどへヴィローテーションで聴いている訳でもない。
にも関わらず、この企画の第1弾にルーサーを持ってきたのは、私にブルースの楽しさ、格好良さを教えてくれたのが彼の曲だったからだ。

ルーサー・アリソンはシカゴで活躍したブルースシンガー/ギタリストである。1939年アリゾナ州メイフラワーに生まれ、1950年頃にシカゴに移り、ブルースマンとして活動を始める。1970年代にはデルマークやモータウンにアルバムを残すものの、その後はぱっとせず、1980年代は主にヨーロッパで活動していた。1990年代に入って『Bad Love』でようやく注目され、アメリカに戻って活躍するが、1997年肺癌のため惜しくも急逝した。

私は、もともとブルースはまったくと言っていい程聴かない方だった。というか、黒人音楽そのものが性に合わない、そう思い込んでいたのである。
そんな私の思い込みを覆したのが、某大手輸入盤屋で購入した『Birth Of The Blues』という3枚組みの廉価盤だった。ブルースにそんなに興味がなかった私が何故いきなりそんなものを買ったかというと、まず何よりも激安だったのと(1,500円を切る値段だった)、そろそろロックやポップス以外のものにも手を出してみたいと思っていたからである。
このコンピ盤、『Birth Of The Blues』というタイトルと、ジャケットに使われているいかにも戦前のアメリカっぽい写真とから、てっきり戦前のブルース黎明期の曲を集めたものと思いこんで買ったのだが、実際には戦後のブルースを幅広く、というよりもまとまりなく集めたものだった。
今なら曲目とアーティストの一覧を見れば一目瞭然だが、当時(2003年2月17日に購入している)の私はそんなことも判らないくらいブルースという音楽について無知だったのである。


さてそんなこんなで購入したコンピ盤の1枚目の5曲目に収録されていたのが運命の曲、ルーサー・アリソンの「The Thrill Is Gone」だった。これはルーサー・アリソンのオリジナル曲ではなく、オリジナルはロイ・ホーキンスである。さらにB.B.キングがヒットさせ、他にも色んな人がやっているいわばブルースのスタンダードナンバーなのだが、当然ながらその時の私にとってはこのルーサー・アリソンのバージョン(後にライヴバージョンだと判った)がこの曲の初体験だった。
そして、ブルースについてよく知らないながらも、なんとなく渋くて辛気臭い音楽というような印象のあった私にとって、それは目から鱗が落ちるような体験だった。
とにかく有無を言わせず格好良いのだ。グルーヴ感溢れるベースライン、分厚いホーンセクション、そしてそれに乗ってあくまでも熱くワイルドにギターを弾きまくりシャウトするルーサー・アリソン。ライヴバージョンだったこともあるかも知れないが、同じコンピ盤に収録された他の曲と比べてもその熱さと格好良さは群を抜いていた。

もっともブルースが辛気臭いものだなどというのは私の勝手な思い込みに過ぎないのであって、もともとブルースには酒場で場を盛り上げたり客を踊らせたりするための音楽という側面もあるのだから、明るく楽しくノリのよいものもあって当然なのだ。
とは言え、数多いブルースマンの中でも、ルーサー・アリソンのプレイはひときわ熱い、とそれなりにブルースを聴いてきた今の時点でも断言できる。小出斉氏は著書『ブルースギター・バトル』(ミュージックマガジン社刊)の中で、ルーサーのプレイを「常に全力投球。決して手を抜かない。」と形容しておられるが、正しくそういう感じである。食べ物にたとえるなら焼肉、それもカルビといったところだろうか。圧倒的な存在感、他を圧倒する濃厚な味。
しかし、あまりにも濃厚すぎて、満腹するまで食べるとしばらくはいいや、という気持ちになるのも確かだ。アメリカでブレイクした後、1995,1997年に録音された『Live In Chicago』という2枚組の名作ライヴ盤があるが、さすがに2枚続けて聴くと2枚目の中盤くらいでお腹一杯、という感じになり最後まで聴きとおすのはちょっとしんどい。
もちろん、手慣れのブルースマンたる彼のことであるから、一方的に押すばかりでなく引いたり間を空けたりとその辺のテクニックは心得ているのだが、あまりにも「押し」の印象が強すぎて聴き終わった後にはそれしか頭に残らない。とにかくひたすら弾きまくり、押しまくる。それがこの人の持ち味である。
そういう意味では、やはりスタジオ盤よりもライヴ盤の方がルーサーらしさを存分に楽しめる。そして映像があればなおさら良い。
1997年4月にフランス領リユニオン島で行われたライヴの模様が『Live In Paradise』として、完全版で、全18曲、2時間半にも及ぶ長尺で素晴らしい内容のVHSおよびDVDで発売されていた。残念ながら現在は廃盤だが、amazonのマーケットプレイスでは(ちょっと高価だが)購入できるようだ。

実はこのライヴの3ヵ月後、1997年7月にはルーサーは肺癌で亡くなってしまうのだが、このライヴ映像を見る限りではとてもそんなことになるとは信じられない。2時間半、最初から最後までひたすらがんがん弾きまくり唄いまくる。途中、エルモア・ジェイムズの「Sky Is Crying」のカバーでは、ギターを抱えたまま客席に降りてゆき、観客を掻き分けつつギターを弾いて練り歩く、という凄いこともやってのける(その場に居たかったなあ…)。
最後のほう、MCで「この時間は私の人生の最良の時だ」みたいなことを言う場面がある(英語だからはっきり判らんが)。3ヵ月後には亡くなってしまう事を考えると、この台詞には思わずジーンときてしまった。あるいはこの時点で自らの死を予感していたのだろうか…。もっともライヴの度に同じような台詞を口にしていた、という可能性もないではないけど。

とにかく、彼は常に全力投球、完全燃焼だったのだろう。そして57年の生涯の後、燃え尽きて灰になってしまった(メルヘンチックに言うならお星様になった)のだと思う。

◆ルーサー・アリソンの公式サイト
Luther-Allison.com
この公式サイト上には、ライヴのyoutube動画が2つアップロードされている(1時間14分のものと32分のもの)。とりあえずは、これでルーサーのライヴを体験して欲しい。

◆お勧めCD
『South Side Safari 』(M.I.L. Multimedia)
1979年イリノイ州でのライヴを収録した盤。これの5曲目に入っている「The Thrill Is Gone」こそが、『Birth Of The Blues』に収録されていたもののオリジナルであり、また私自身が買った始めてのルーサーのアルバムでもある。全7曲、40分前後とコンパクトながら、キレのよいタイトな演奏で盛り上がる。初心者にもお勧め。


『Live In Chicago(Alligator)
1995年および1997年のライヴをCD2枚組にぎっしり詰め込んだもの。円熟期のルーサーの熱いライヴがこれでもかというくらい堪能出来る。文中で書いたようにやや濃厚すぎ、という感じも多分にあるが。1枚づつ分けて聴くほうが良いかも知れない。


『Hand Me Down My Moonshine』(Ruf Records)
ライヴが続いたので、今度はスタジオ盤を。と言っても普通のスタジオ盤ではなく企画モノ。なんと全曲アコギ弾き語りである。ルーサーとアコギというのはイメージが合わないような気もするがこれはこれでなかなか渋い。スローな曲でじっくり歌い上げるルーサーのヴォーカルが楽しめる。


『Live in Paradise [DVD]』(Ruf Records)
前述のライヴDVD。ルーサーのブルースが気に入ったなら是非とも見てほしいライヴDVDだ。amazonの情報では、リージョン=1(米国向け)と記載されているが、私が購入したものは国内用のDVDプレーヤーで再生可能だった。




『Songs From the Road (Bonus Dvd))』(Ruf Records)
CD+DVDのライヴ盤。『Live in Paradise [DVD]』はちょっと高価なので、手を出しにくいという人はまずこちらを。

第1回 了          



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