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2016.10.08

●私的ブルースマン列伝 第1回 燃え尽きるほどヒート〜ルーサー・アリソン篇〜●

旧館からの移行残りのコンテンツ、「私的ブルースマン列伝」の第1回を再録します。とは言っても、昔に書いたものですので、内容はある程度修正を行いました。
それから、今までは「音楽四方山話」というタイトルを付けていましたが、今回それをやると、「音楽四方山話第◯回私的ブルースマン列伝第□回」ということになってややこしいので、今後は、最初から連載する予定のあるものは、「音楽四方山話」の冠を外し、単発ネタのもののみ「音楽四方山話」とすることにしました。
それでは若書き(というほど若かった訳ではないが)の誹りは免れえませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。



私は、ルーサー・アリソンについては、それほど熱狂的なファンという訳ではない。CDは一応ほぼ全部のCDを集めたが、それほどへヴィローテーションで聴いている訳でもない。
にも関わらず、この企画の第1弾にルーサーを持ってきたのは、私にブルースの楽しさ、格好良さを教えてくれたのが彼の曲だったからだ。

ルーサー・アリソンはシカゴで活躍したブルースシンガー/ギタリストである。1939年アリゾナ州メイフラワーに生まれ、1950年頃にシカゴに移り、ブルースマンとして活動を始める。1970年代にはデルマークやモータウンにアルバムを残すものの、その後はぱっとせず、1980年代は主にヨーロッパで活動していた。1990年代に入って『Bad Love』でようやく注目され、アメリカに戻って活躍するが、1997年肺癌のため惜しくも急逝した。

私は、もともとブルースはまったくと言っていい程聴かない方だった。というか、黒人音楽そのものが性に合わない、そう思い込んでいたのである。
そんな私の思い込みを覆したのが、某大手輸入盤屋で購入した『Birth Of The Blues』という3枚組みの廉価盤だった。ブルースにそんなに興味がなかった私が何故いきなりそんなものを買ったかというと、まず何よりも激安だったのと(1,500円を切る値段だった)、そろそろロックやポップス以外のものにも手を出してみたいと思っていたからである。
このコンピ盤、『Birth Of The Blues』というタイトルと、ジャケットに使われているいかにも戦前のアメリカっぽい写真とから、てっきり戦前のブルース黎明期の曲を集めたものと思いこんで買ったのだが、実際には戦後のブルースを幅広く、というよりもまとまりなく集めたものだった。
今なら曲目とアーティストの一覧を見れば一目瞭然だが、当時(2003年2月17日に購入している)の私はそんなことも判らないくらいブルースという音楽について無知だったのである。


さてそんなこんなで購入したコンピ盤の1枚目の5曲目に収録されていたのが運命の曲、ルーサー・アリソンの「The Thrill Is Gone」だった。これはルーサー・アリソンのオリジナル曲ではなく、オリジナルはロイ・ホーキンスである。さらにB.B.キングがヒットさせ、他にも色んな人がやっているいわばブルースのスタンダードナンバーなのだが、当然ながらその時の私にとってはこのルーサー・アリソンのバージョン(後にライヴバージョンだと判った)がこの曲の初体験だった。
そして、ブルースについてよく知らないながらも、なんとなく渋くて辛気臭い音楽というような印象のあった私にとって、それは目から鱗が落ちるような体験だった。
とにかく有無を言わせず格好良いのだ。グルーヴ感溢れるベースライン、分厚いホーンセクション、そしてそれに乗ってあくまでも熱くワイルドにギターを弾きまくりシャウトするルーサー・アリソン。ライヴバージョンだったこともあるかも知れないが、同じコンピ盤に収録された他の曲と比べてもその熱さと格好良さは群を抜いていた。

もっともブルースが辛気臭いものだなどというのは私の勝手な思い込みに過ぎないのであって、もともとブルースには酒場で場を盛り上げたり客を踊らせたりするための音楽という側面もあるのだから、明るく楽しくノリのよいものもあって当然なのだ。
とは言え、数多いブルースマンの中でも、ルーサー・アリソンのプレイはひときわ熱い、とそれなりにブルースを聴いてきた今の時点でも断言できる。小出斉氏は著書『ブルースギター・バトル』(ミュージックマガジン社刊)の中で、ルーサーのプレイを「常に全力投球。決して手を抜かない。」と形容しておられるが、正しくそういう感じである。食べ物にたとえるなら焼肉、それもカルビといったところだろうか。圧倒的な存在感、他を圧倒する濃厚な味。
しかし、あまりにも濃厚すぎて、満腹するまで食べるとしばらくはいいや、という気持ちになるのも確かだ。アメリカでブレイクした後、1995,1997年に録音された『Live In Chicago』という2枚組の名作ライヴ盤があるが、さすがに2枚続けて聴くと2枚目の中盤くらいでお腹一杯、という感じになり最後まで聴きとおすのはちょっとしんどい。
もちろん、手慣れのブルースマンたる彼のことであるから、一方的に押すばかりでなく引いたり間を空けたりとその辺のテクニックは心得ているのだが、あまりにも「押し」の印象が強すぎて聴き終わった後にはそれしか頭に残らない。とにかくひたすら弾きまくり、押しまくる。それがこの人の持ち味である。
そういう意味では、やはりスタジオ盤よりもライヴ盤の方がルーサーらしさを存分に楽しめる。そして映像があればなおさら良い。
1997年4月にフランス領リユニオン島で行われたライヴの模様が『Live In Paradise』として、完全版で、全18曲、2時間半にも及ぶ長尺で素晴らしい内容のVHSおよびDVDで発売されていた。残念ながら現在は廃盤だが、amazonのマーケットプレイスでは(ちょっと高価だが)購入できるようだ。

実はこのライヴの3ヵ月後、1997年7月にはルーサーは肺癌で亡くなってしまうのだが、このライヴ映像を見る限りではとてもそんなことになるとは信じられない。2時間半、最初から最後までひたすらがんがん弾きまくり唄いまくる。途中、エルモア・ジェイムズの「Sky Is Crying」のカバーでは、ギターを抱えたまま客席に降りてゆき、観客を掻き分けつつギターを弾いて練り歩く、という凄いこともやってのける(その場に居たかったなあ…)。
最後のほう、MCで「この時間は私の人生の最良の時だ」みたいなことを言う場面がある(英語だからはっきり判らんが)。3ヵ月後には亡くなってしまう事を考えると、この台詞には思わずジーンときてしまった。あるいはこの時点で自らの死を予感していたのだろうか…。もっともライヴの度に同じような台詞を口にしていた、という可能性もないではないけど。

とにかく、彼は常に全力投球、完全燃焼だったのだろう。そして57年の生涯の後、燃え尽きて灰になってしまった(メルヘンチックに言うならお星様になった)のだと思う。

◆ルーサー・アリソンの公式サイト
Luther-Allison.com
この公式サイト上には、ライヴのyoutube動画が2つアップロードされている(1時間14分のものと32分のもの)。とりあえずは、これでルーサーのライヴを体験して欲しい。

◆お勧めCD
『South Side Safari 』(M.I.L. Multimedia)
1979年イリノイ州でのライヴを収録した盤。これの5曲目に入っている「The Thrill Is Gone」こそが、『Birth Of The Blues』に収録されていたもののオリジナルであり、また私自身が買った始めてのルーサーのアルバムでもある。全7曲、40分前後とコンパクトながら、キレのよいタイトな演奏で盛り上がる。初心者にもお勧め。


『Live In Chicago(Alligator)
1995年および1997年のライヴをCD2枚組にぎっしり詰め込んだもの。円熟期のルーサーの熱いライヴがこれでもかというくらい堪能出来る。文中で書いたようにやや濃厚すぎ、という感じも多分にあるが。1枚づつ分けて聴くほうが良いかも知れない。


『Hand Me Down My Moonshine』(Ruf Records)
ライヴが続いたので、今度はスタジオ盤を。と言っても普通のスタジオ盤ではなく企画モノ。なんと全曲アコギ弾き語りである。ルーサーとアコギというのはイメージが合わないような気もするがこれはこれでなかなか渋い。スローな曲でじっくり歌い上げるルーサーのヴォーカルが楽しめる。


『Live in Paradise [DVD]』(Ruf Records)
前述のライヴDVD。ルーサーのブルースが気に入ったなら是非とも見てほしいライヴDVDだ。amazonの情報では、リージョン=1(米国向け)と記載されているが、私が購入したものは国内用のDVDプレーヤーで再生可能だった。




『Songs From the Road (Bonus Dvd))』(Ruf Records)
CD+DVDのライヴ盤。『Live in Paradise [DVD]』はちょっと高価なので、手を出しにくいという人はまずこちらを。

第1回 了          



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