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May 2017

2017.05.03

●さすらいの兄弟〜ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ以前のジャイルズ兄弟について〜●

どもです。またまた間が空いてしまいました。今までは、「だ・である調」で書いていたのですが、なんか重苦しかったので、今回から「ですます調」に変えてみました。



昨年末から、左膝の痛みを抱えていて、整形外科へも通院しているのですが、なかなか良くなりません。自宅でも、折を見て自宅リハビリとしてストレッチを行っているのですが(最近サボりがち)、他に場所がないので、フローリングのダイニングキッチンの床に寝て行っています。そんでもって足元にはCDがギュウギュウに詰まったCD棚がある訳ですが、ストレッチの合間に、なんとなくCD棚を見返して、お、こんなCDも買ってたな、と思わぬ発見?をすることがあります。今回も、そんな風に「再発見」したCDについての記事です(前フリなげーよ)。
で、そのCDが以下のものになります。
The Giles Brothers 1962 - 1967 front
The Giles Brothers 1962 - 1967 back

The Giles Brothers 1962 > 1967 Voiceprint VP500CD
※左の画像をクリックすると、amazonのサイトに飛びます。何故かアダルト商品のカテゴリになっているのですが(^^;、普通のCDです(amazonには修正希望を上げているのですが...)。

既におわかりの人もいると思いますが、「The Giles Brothers」というアーティストが居た訳ではありません。このCDは、ピーター&マイケルのジャイルズ兄弟が、キング・クリムゾンの前身である、ジャイルズ・ジャイルズ&フリップの前に参加していたバンドの内、録音が残っている物について集めたものです。従って、実際のアーティスト名はばらばらになります。

このCDを出しているのは、Voiceprintという、プログレ系に強いレーベルですが、ここの出すCDは編集にしても何にしても雑だというのが難点で、このCDもジャケ写を見るかぎり、すごく解像度の粗い画像をむりやりカラーコピーしたみたいな、イケてないものになっています。
そんなことだから、解説の方もどうせ英語で1.2ページ書いてあってお終いだろうと思っていたら、巻末に4ページ、ジャイルズ兄弟が在籍したバンドの歴史が(録音が残っていないものも含めて)まとめてありました。やればできる子>Voiceprint。
せっかくなので、その情報を判りやすい表形式にして、まとめてみたのが以下の表です。

バンド名活動期間メンバーギグ回数録音
Johnny King & The Raidersfm:60/1/12
to:61/8/27
Johnny King(vo)
Roger Collins(gt)
Graham Douglas(gt)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
113回
Dave Anthony & The Rebelsfm:61/8/28
to:61/11/11
Tony Head(vo)
Al kirtley(gt)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
27回
The Dowland Brothers & The Soundtracksfm:61/11/4
to:63/9/14
Dave Dowland(vo,gt)
Gordon Dowland(vo,gt)
Allan Bowery(gt)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
223回
The Sands Combosfm:63/9/27
to:63/11/12
Al Kirtley(pn)
Graham Douglas(gt)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
2or3回
The Internsfm:63/11/16
to:63/12/4
Roger Collins(gt,vo)
Kevin Drake(sx,vo)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
8回
Trendsetters LTDfm:64/1/8
to:67/8/5
Bruce Turner(gt,vo)
Allan Azerm(pn,vo)
Mike Blacksley(tb,vo)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
758回
The Trendfm:67/1月
to:67/6月
Allan Azerm(pi,vo)
Mike Blacksley(tb,vo)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)
The Brainfm:67/6月
to:67/8月
Allan Azerm(pn,vo)
Mike Blacksley(tr,vo)
Peter Giles(bs)
Michael Giles(dr)

ということで、ジャイルズ兄弟の放浪?の歴史をまとめてみました。録音有りのバンドの、録音の内容については書いていませんが、これは微妙な問題があるので、後でまとめます。
さて、1960年始めのJohnny King & The Raidersから、1967年8月のThe Brainまで、約7年半で9つのバンドを渡り歩いています。Johnny King & The Raiders → Dave Anthony & The Rebelsの時なんか、前のバンドの活動停止日の翌日には新しいバンドで活動を始めると言った有様です。
一番長く続いたのは、約3年半にわたる、Trendsetters LTDですが、
そのギグ回数は、758回!計算してみると、1ヶ月あたり約17回のギグを演っていたことになります。月の半分以上がギグです。ハードですね。このハードワークの中で、ジャイルズ兄弟の演奏技術が培われていったのでしょうか。

さて、次に録音の残っているバンドの録音、即ちこのCDの収録内容についてまた表にしようと思ったのですが、そこで重大な事実が判明しました!
上記の画像左側をクリックして飛べるamazonのページには、ユーザーレビューがついてますが、それによると、CDの11曲目以降は、実際の収録内容とクレジットが大幅にズレている、ていうか殆どバラバラなのだそうな。
私なりに歌詞を聴き取ったりして、実際の順序を判断してみましたが、確かにユーザーレビュー上に記述されている本当の順序が正しいように思われます。判りやすいように、また表にしてみました。

バンド名Tack
No.
誤った順序
(CD上の表記)
正しい順序
The Dowland Brothers & The Soundtracks01. Little SueLittle Sue
02.JulieJulie
03.Big Big FellaBig Big Fella
04.Don't Ever Change 1781Don't Ever Change 1781
05.BreakupsBreakups
06.A Love Like OursA Love Like Ours
Trendsetters LTD
(Track 13.と14.は「Trendsetters」名義での発売、15.と16..は未発表曲)
07.In A Big WayIn A Big Way
08.Lucky DateLucky Date
09.Go AwayGo Away
10.Lollipops & RosesLollipops & Roses
11.Hello JosephineYou've Sure Got A Funny Way
12.Move On OverI'm Coming Home
13.You've Sure Got A Funny WayBoyfriends & Grilfriends
14.I'm Coming HomeShot On Sight
15.Sarah DarlingNightmare In Red
16.It's Not As EasyNobody Knows The Game
The Trend17.Boyfriends & GrilfriendsOne In A Million
18.Shot On SightMost Likely You Go Your Way...
The Brain(Track 21.〜24.は未発表曲)19.Kick The DonkeyMurder
20.Nightmare In RedKick The Donkey
21.Nobody Knows The GameHello Josephine
22.One In A MillionMove On Over
23.Most Likely You Go Your Way...Sarah Darling
24.MurderIt's Not As Easy

※黒文字は正誤なしのもの、赤文字で取消線は誤っているもの、青文字は正しいもの

という感じですが、確かにこれは酷い。10曲目までは正しいのですが、11曲目以降の曲は全て誤っています。それも1個ずつズレているというレベルではなく、シャッフルしたかのようにグチャグチャです(*_*)。やっぱりできない子>Voiceprint。
こうなると、バンド名と曲名のリンクは大丈夫なの?という疑問点もおこってきます。ていうか、はっきり言って信用ならない。参考程度に止めておいた方が良いのかもしれません。
かと言って、それを検証しようとすると、オリジナルのアナログ・レコードを入手する必要がある訳で、個人でそこまでするのはほぼ不可能に近いと思われます。やれやれ。
と思いましたが、今はインターネットの時代です。オリジナルのアナログ・レコードの画像くらい、検索すれば出てくるのではないか?と思いつき、バンド名+曲名で検索かけてみたのですが...、残念ながらヒットした画像は4つばかり。とりあえず、それを見るかぎりでは、青文字で修正した内容と矛盾しませんでした。

そんな感じで、このCDの資料的な面に注目して書いてきましたが、肝心の音楽としての出来はどうなのでしょうか?
正直、あまり期待はできません。なんと言っても、ほぼ無名に近いバンドばかりですからね。
とりあえず、ジャイルズ兄弟のベースとドラムに注目して、聴いていきたいと思います。

  • The Dowland Brothers & The Soundtracks
    (Track 01. 〜 06.)
    おそらくアナログ盤起こしと思われますが、かなり音質が悪いです。全体的にモコモコした音で、解像度が低く、各楽器の音がクリアに聞こえない、特にドラムの音が殆ど聞こえないというのが致命的です。
    音楽的には、まあ、可もなく不可もない、と言った感じのポップソングで、わりかしキャッチーな曲もありますが、全体的に地味です。
    とにかく楽器の音が明瞭に聞こえない、というのがどうしようもない点で、ジャイルズ兄弟の演奏がどうのこうの言う以前の問題でした。
  • Trendsetters LTD
    (Track 07 〜 16)
    これもアナログ盤起こしですが、Track 01.〜06.に比べるとかなりマシです。一応各楽器の音は聴き取れます。
    音楽的には、基本はポップソングですが、トロンボーンを入れたりして、結構あちこち工夫しているところはあります。この辺は比較的活動期間が長かったこともあり(3年半以上)、試行錯誤していた結果でしょうが、残念ながら「これがTrendsetters LTDの音だ!」という独自のスタイルを固定させるところまでは行かなかったように思います。
    ジャイルズ兄弟も、大半の曲では単なるリズム隊の仕事しかしていないのですが、何曲か、結構表に出る曲もあります。特にマイケルのドラムは、独特の手数の多いドタバタした感じの耳に馴染みのあるものです。
  • The Trend
    (Track 17 〜 18)
    これはアナログ盤起こしではないようで、まあまあ良好な音質です。
    2曲しかないので、バンドの音楽的傾向云々は言いにくいのですが、メンバー3名は前身Trendsetters LTDからそのまま居るので、割りと似た路線です。ジャイルズ兄弟については、あまり目立っていません。
  • The Brain
    (Track 19 〜 24)
    これもアナログ盤起こしではないようです。
    メンバーはThe Trendと同じですが、音の方は微妙に違うような気がします。既に時代はサイケの大流行している時代ですが、多少サイケっぽいくらいで、あまりそっち方面からの影響は受けていないようです。このCDの中では、一番好きな感じの音です(あくまで個人的感想ですが)。
    ジャイルズ兄弟は、結構目立っています。リズム隊として、バンドを引っ張っていく感が出ています。6曲中、4曲がお蔵入りになったのは残念なところ。

ということで、ジャイルズ兄弟の、約7年半におよぶ放浪の時代を振り返ることのできるCDでした。資料的には非常に貴重なものだと思いますが、それだけに曲名クレジットの大幅な誤りは残念なところです。
基本的には、マイナーバンドの録音なので、クリムゾンやジャイルズ・ジャイルズ&フリップの音を期待して入手すると、がっかりする人が多いでしょう。まあ、1960年代に、2人の兄弟が、ブリテッシュ・ポップの世界をさまよっていった、その化石のようなものと捉えるのが近いと思います。

2017/5/18 大幅追加
ということで、このCDについて、音楽的な面を考えて入手するとがっかりする人が多い、と書きましたが、そうは言ってもちょっと聴いてみたい、と言う人も多いでしょう。今はインターネットのある時代です。特に有難いのがなんでもあるYoutube。
ということで、バンド名でYoutubeを検索してみると、一番録音の多いTrendsetters LTDについては、3曲ありました。もちろん、静止画+音楽で、動画ではありませんが。問題はその静止画で、アナログシングル盤のレーベル面の写真になっているのですが、それが「Trendsetters LTD」ではなく、「Trendsetters Limited」になっていることです。「Limited」を「LTD」と略記するのは通常のことなので、大きな問題ではありませんが、正式名は「Trendsetters Limited」であったようです。
そんな訳で、その3曲を貼っておきますよ。

1.In A Big Way/Trendsetters Limited

2.I'm Coming Home/Trendsetters Limited

3.Go Away/Trendsetters Limited

ここまでは問題はありません。問題は、経歴の最後の、「The Brain」というしごくありきたりの名前のバンドで、「The Brain」と言う名前で検索しても、ノイズばかりで見つけることができなかったのですが、「Trendsetters Limited」で検索した時に、関連動画として、「Nightmare In Red」と「Nobody Knows The Game」の2曲が表示されたのですが、そのバンド名が「Trendsetters Limited」ではなく、「The Brain」となっていたことです。しかし、上記曲名順表の正のところでは、この2曲は「Trendsetters Limited」のものとなっています。
曲名の正誤表を書いた後に、「バンド名と曲名のリンクは大丈夫なの?という疑問点もおこってきます」と書きましたが、やはり大丈夫ではなかった、ということですね。曲順については、上記正誤表で書いたものが正しいと思われますが、バンド名については、信用できない、という考え方が正しかったことがはっきりしました。
ということで、「Trendsetters Limited」ならぬ「The Brain」の2曲を貼っておきます。

4.Nightmare In Red/The Brain

5.Nobody Knows The Game/The Brain

更に問題は出てきます。「「Trendsetters LTD」ではなく、「Trendsetters Limited」で検索すると、色々と出てきました。まずは、Trendsetters Limitedの英語版Wikipediaがありました。これにDiscographyが記されていましたので、引用してみます。

1964: "In a Big Way"/"Lucky Date" Parlophone R5118
1964: "Hello Josephine"/"Move on Over" Parlophone R5161 ("Move on Over" was re-released in 2007 as an album track on Try Me Out: Ballroom Beat Vol. 2.
1965: "I'm Coming Home"/"You Sure Got a Funny Way of Showing Your Love" Parlophone R5324
これにより、「Hello Josephine」および「Move on Over」は、Trendsetters Limitedの曲で、The Brainの曲ではなかったことが判ります。

更に、「60s/70s英国ロック・データベース注1」と言うサイトの、 「Trendsetters Limitedのページ」を見ると、Trendsetters Limited、The Trend、The Brainのディスコグラフィーが上げられていました。これも引用してみます。


・Trendsetters Limited
In A Big Way/Lucky Date (Parlophone R5118) 1964/3
Move On Over/Hello Josephine (Parlophone R5161) 1964/7
Go Away/Lollipops And Roses (Parlophone R5191) 1964/10
You Sure Got A Funny Way Of Showing Love/I’m Coming Home (Parlophone R5234) 1965/8

・The Trend
Boyfriends And Girlfriends/Shot On Sight (Page On POF004) 1966/11

・The Brain
Kick The Donkey/Nightmares In Red (Parlophone R5595) 1967/5

これにより、12曲のバンド名は確定しました。

残る12曲については、まず、上記ページにない、The Dowland Brothers & The Soundtracksについて、ダウランド兄弟絡みの曲を集めた『The Dowlands『All My Loving』というCDが別途出ていたみたいで、「ぷろぐれ者が行く別館 PROG MAN GOING Annex」というページにその表裏ジャケの写真があったので、裏ジャケの曲名一覧を参考にさせてもらうと、「Little sue」、「Julie」、「Break Ups」、「A Love Like Ours」、「All My loving」、「Hey Sally」という6曲が、「with The Soundtracks」となっているので、The Dowland Brothers & The Soundtracksとしてリリースされたもののようですが、上記曲名順表によれば、「Little sue」、「Julie」、「Break Ups」、「A Love Like Ours」の4曲は一致しますが、「All My loving」、「Hey Sally」ではなく、「Big Big Fella」および「Don't Ever Change (1781)」が、The Dowland Brothers & The Soundtracksの曲となっています。実際に曲の歌詞を聞き取ってみますと、やはり「Big Big Fella」および「Don't Ever Change (1781)」だと思われるので、ここはこのCDの誤りと推測されます。これで更に6曲が確定しました。

さらにおなじく「ぷろぐれ者が行く」の「若き日のジャイルズ兄弟が駆け抜けた1960年代 その1」 及び 「同 その2」によると、「Sarah Darling」および「It's Not As Easy」は、Trendsetters Limitedが録音したものの未発表に終わったもの、「Nobody Knows The Game」、「One In A Million」、「Most Likely You Go Your Way...」、「Murder」の4曲はThe Brainが録音したものの、やはり未発表に終わったもののようです。
これで全24曲全てのバンド名が判明しました!

以上の結果から、曲順表を確定できたバンド名に沿ったものにして、作り直してみました。

バンド名Tack
No.
曲名
The Dowland Brothers & The Soundtracks01.Little Sue
02.Julie
03.Big Big Fella
04.Don't Ever Change 1781
05.Breakups
06.A Love Like Ours
Trendsetters Limited07.In A Big Way
08.Lucky Date
09.Go Away
10.Lollipops & Roses
11.You've Sure Got A Funny Way
12.I'm Coming Home
The Trend13.Boyfriends & Grilfriends
14.Shot On Sight
The Brain15.Nightmare In Red
The Brain
(未発表)
16.Nobody Knows The Game
17.One In A Million
18.Most Likely You Go Your Way...
19.Murder
The Brain20.Kick The Donkey
Trendsetters Limitd21.Hello Josephine
22.Move On Over
Trendsetters Limited
(未発表)
23.Sarah Darling
24.It's Not As Easy

ということになります。
軽い気持ちで始めた記事ですが、最終的にはかなりヘヴィな内容になってしまいました。
次回はもうちょっと軽いネタで行こう...。

注1 このサイトの管理人さんは2016年に亡くなった旨が、トップページに記されています。ご冥福をお祈りします。

                                        了

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