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April 2018

2018.04.22

●ブルースとサイケのとある出会い〜Part 1●

ブルースとサイケ(デリックロック)、一見あまり縁がないジャンルのように見えますが、中にはその2つがうまく出会った事例があるのです。そのキーはテキサスという地にありました。



まずは、ブルースの方から行きますが、テキサスと言えば、ブルースファンの間でも有名な地域。「テキサス・ブルース」というサブジャンルも出来ているほどです。
では、「テキサス・ブルース」の代表的なブルースマンと言えば?これについては、まあ、異論もあると思いますが、一般的には、ライトニン・ホプキンスということになるでしょう。ライトニン・ホプキンス(以降、「ライトニンと略記)と言えば、カントリー・ブルースにルーツを持ちながらも、それだけでは終わらない、独特の個性を持ったブルースを演奏し続けた存在であり、その音楽はもちろん、人間としてキャラクターも「立ってる」ことで有名です。いわばワンマン・ワンジャンル、と言っても過言ではない、稀有な存在と言えましょう。
そして、サイケの方。一般にサイケと言えば、英ロンドンだったり、米西海岸だったりしますが、実はテキサスにもサイケのムーヴメントはあり、「テキサス・サイケ」と呼ばれたりしています。
その中心的存在だったのが、International Artistsというレーベルであり、その看板アーティストとも言うべき存在が、13thフロア・エレベーターズ(以降、エレベーターズと略記)でした。

この、ライトニンとエレベーターズ,2つのアーティストに(テキサス出身であることを除いては)、共通性などないように思われますし、なんらかの接点もないように思えます。
が、実は意外な接点があったんですね。1968年発表のライトニンのアルバム『Free Form Patterns』はテキサス・サイケの総本山、International Artistsレーベルから、発表されました。そしてバックメンバーには、ライトニンのいとこでもあり、度々共演していたビリー・バイザー(以降ビリーと略記)の他に、ベースのデューク・デイヴィス、ドラムのダニー・トーマスが参加していますが、このリズム隊の2人が、他ならぬエレベーターズの(当時の注1)メンバーだったのです。

もったいぶるようですが、話を先に進める前に、ライトニンがどんなふうな曲をやっていたか、あるいはエレベーターズがどんなふうな曲をやっていたか、よく知らない人のために、それぞれの代表曲を1曲ずつ、例によってYouTube動画注2)で貼ってみたいと思います。そんなのよく知ってるわい!という人は飛ばして先へどうぞ。

ライトニン・ホプキンス「Mojo Hand」

13thフロア・エレベーターズ「Slip Inside This House」

どうでしょうか?う〜ん、あまりにも音楽性が違いすぎて(そりゃそうだ)よく判りませんねえ。でも、敢えて共通点をあげるなら、独特の乾いた、土臭い(泥臭い、と表現してもいいが、それだとちょっとウェットな感じがしてしまう)、垢抜けない感じが共通してはいませんか?
この「感じ」個人的にはテキサス出身のアーティストにはしばしば見られるものだと思っています。

とりあえず、その『Free Form Patterns』がどういうアルバムか、説明していきましょう。


(画像クリックでamazonに飛びます)

Ligtnin' Hopkins『Free Form Patterns』(Charly J 750)
 1.(A1) Mr. Charlie
 2.(A2) Give Me Time To Think
 3.(A3) Fox Chase
 4.(A4) Mr. Dittas' Grocery Store
 5.(A5) Open Up Your Door
 6(.B1) Baby Child
 7.(B2) Cookings Done
 8.(B3) Got Her Letter This Morning
 9.(B4) Rain Falling
 10.(B5) Mini Skirt
CD Bonus Track
 11, Black Ghost Blues

さすがに「どサイケ」なジャケですね。それはそれとして、画像を見た人は何か違和感を感じたと思います。普通の、平面的なジャケ写でなく、斜めから撮った写真で、CDのケースも厚みがあるように思われます。
実は、このCD、3枚組のデジパック仕様なんですね。で、上記で書いた曲目一覧はDisc 1のものなんですが、Disc 1が、一応オリジナル盤10曲+ボーナストラック1曲という仕様になっております。
では、Disc 2とDisc 3には何が収録されているのか?それについてはおいおい触れることにして、まずオリジナル盤+ボーナス・トラックのレビューをしていきましょう。

  1. Mr. Charlie 7:06 注3
    1曲目からいきなり7分を超える大曲です。というのは、約3分30秒にもわたる「語り」の部分が冒頭にあるから。
    この歌は、南部の「ミスター・チャーリー」に雇われている黒人少年が、製粉所の火事を雇い主に告げようとするのですが、ひどい吃音症のため、上手く伝えることが出来ない、そこで歌って聴かせた、という内容(らしい(^^;)なんですが、その事件の内容を言い聞かせる語りの部分が最初にあって、それから歌に入ります。
    肝心の歌に関しては、ほぼライトニンの弾き語りです(控えめにベース入ってる?)。 とりあえず、YoutTubeにあったので、貼っておきます。



    あと、この曲は、B面曲「Baby Child」と共に、シングル・カットされてます。これは、『Never Ever Land』注4というInternational Artistsレーベルの3枚組コンピ盤のブックレットに付記されているシングル盤ディスコグラフィに明記されています。
    しかし、7分を超える大曲を、そのままシングル・カットは出来ないはずなので、何らかの編集がされていると思うのですが、この『Never Ever Land』というコンピ盤、ライトニンの曲は未発表曲も含め、4曲も収録しているのに、肝心の「Mr. Charlie」のシングル・バージョンは収録されていないのです。うぬ〜、役に立たない奴め〜。
    YouTubeにないかと思って、検索してみたのですが、アルバムバージョンしかありませんでした。
    一応、レーベルの画像だけは、こちらのサイトにありました。それには、「3:35」という数字が表記されています。この数字が演奏時間だとしたら、アルバムバージョンから、語り部分を取り去ると、残った部分は大体4分前後になるので、多分アルバムバージョンから語り部分をばっさりカットしたものではないか?と思われるのですが...。あとはシングル盤そのものを入手しないと話が進みませんが、手近にそのための環境も何もないため、ここは仮説のまま置いておくことにします。

  2. Give Me Time To Think 3:51
    2曲目から、ハーモニカとベースとドラムが入ってきて、バンド編成になります。が、あくまでも「ライトニンの世界」です。リズム隊2人はライトニンに合わせて慎重にプレイしている感じです。それと対象的に、ハーモニカのビリーはさすがにライトニンとは度々共演している「気心の知れた仲間」だけあって、息がピッタリあっています。
    この曲はYoutubeにはありませんでした。

  3. Fox Chase 3:29
    ビリーのハーモニカから入り、一転して、アップテンポな曲です。リズム隊2人も前へ出る感じでプレイしています。ライトニンは控えめにギターを弾くだけなので、あまり目立ちません。途中、奇声を上げているのは、ライトニンかとおもいきや、CDのブックレットには、「Billy Bizor: Harmonica and lead vocal on Fox Chase」とありますので、ビリーのようです。
    この曲もYoutubeにはありませんでした。

  4. Mr. Dittas' Grocery Store 5:36
    またしてもビリーのハーモニカから入りますが、こちらはややスローでダウンホームなカントリー・ブルースです。リズム隊の2人は、前曲同様結構前に出てる感じで、ドラムのダニー・トーマスは、ライトニンのギター・ソロ時に結構目立ったプレイをしている他、控えめながらフィル・インをかましてきます。
    この曲もYoutubeにはありませんでした。

  5. Open Up Your Door 3:58
    異様に「重い」ライトニンのギターから入るスローでダークなブルースです。ピアノを弾いているのは、CDのブックレットに拠ると、エルモア・ニクソン注5という人物のようです。ハーモニカの音は聞こえないので、ビリーはこの曲には参加していないと思われます。
    この曲もYoutubeにはありませんでした。

  6. Baby Child 3:37
    ライトニンは、出だしで一言言うだけで、あとはギターに専念しています。ヴォーカルを取るのは、ビリー。実際にはビリーのリード曲と言っていいでしょう。前曲に引き続き、エルモア・ニクソンがピアノを弾いています。
    この曲はYoutubeにありましたので貼っておきます。ただし、画像は「Baby Child」でなく、なぜか「Mr. Charlie」のシングルの画像が使われています。


  7. Cookings Done 3:50
    「Mojo Hand」の変奏曲、とでも言うべき曲で、メロディーや歌詞の一部は同じです(ライトニンにはこのパターンがよくある)。アップテンポな曲になると、リズム隊の2人も元気になるようで前に出ています。
    この曲はYoutubeにはありませんでした。

  8. Got Her Letter This Morning 5:00
    「Open Up Your Door」と出だしが全く同じです(笑)。その後の展開もよく似ています。これはライトニンの曲にはよくあることで、いわば1つのテンプレートという感じでしょうか。最後の方でライトニンが「Oh Year!」と叫んでいます。大分調子が出てきたのでしょうか?
    この曲はYoutubeにはありませんでした。

  9. Rain Falling 5:04
    またまたライトニンの「テンプレート」中の1曲です。この曲では、ドラムがかなり前へ出て積極的に叩いてます。リズム隊の2人は、これまでどこか遠慮したようなところがありましたが、ようやく4人の気が合ってきた用な感じです。
    この曲は、Youtubeにありましたのでまた貼っておきます。


  10. Mini Skirt 3:04
    オリジナル・アナログ盤では最後に来る曲。この曲が一番盛り上がっています。ライトニンは「歌う」というより「叫ぶ」ような調子で歌詞を吐き散らし、そして「Harmonica, All right!」と叫んでビリーにソロを取らせたり、「Drum, All right!」と叫んでドラムスにソロを取らせたりします。今までどちらかというと、後ろに引いた感じだったリズム隊の2人もようやく思う存分にプレイしてるように聴こえます。
    この曲はYoutubeにはありませんでした。

  11. Black Ghost Blues (Bonus Track) 3:31
    ボーナストラックとして収録されているこの曲は、他の曲と明らかに感じが違います。ライトニン1人の弾き語りですし、全体にあのヘラルド録音のような深いエコーがかけられています。出元が違うのではないか?という感じがあります。
    この曲は、Youtubeにありましたのでまた貼っておきます。

ということで、ボーナストラックを含む11曲を聴いてきましたが、全体の感想としては、ベースのデューク・デイヴィス、ドラムのダニー・トーマスともに「リズム隊」としての仕事に専念して、表にはあまり出ていないのがちょっと残念です。まあ、まだ若い2人と、大ベテランのライトニンとでは、そうなっても仕方ないところではありますが...。

ということで、だいぶん長くなってしまったので、CDの、Disc 2・Disc 3についてはPart 2として取り上げたいと思います。またふとしたことから浮上した「Mini Skirt」別バージョン問題についても取り上げる予定です。

                                   続く

注1.当時のロックバンドの例にもれず、エレベーターズもメンバーの出入りが激しかった。
注2.Youtubeに存在しているかどうかのチェックは、2018年4月21日時点のものです。それ以降に削除されている可能性があります。以降同様
注3.時間表記は、iTunes上で表示されるものを記載しています。以降同様。
注4.『Never Ever Land 83 Texsan Nuggets From International Artists Records ~ 1965-1970 ~』(Charly SNAJ 735 CD)
注5.エルモア・ニクソン(Elmotre Nixson)については、何故かドイツ語版のWikipediaにのみ項目があります。Google翻訳した結果はこちら

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